ムツゴロウさんが死んじゃった
2023年4月5日、作家の畑正憲氏の訃報が届きました。
Youtubeチャンネル「ムツゴロウの656」でも最近のご様子を見ていたし、まあ87歳。驚きはありませんでしたが、近頃続く訃報の中でもとりわけショックではありました。この国に現存する人の中で、僕の尊敬する最上位にいた人だから。
ラジカルなひと
畑さん、いやムツゴロウさんを思う時、頭に浮かぶのが「ラジカル」という言葉で。
”ラジカル”というと「過激な‥」といった使われ方が多いけれど、面白いのが「根源的な‥」という意味も合わせもつこと。
radical【形】
過激な、極端な、過激派の、先鋭の、急進的な、
根本的な、根源的な、本来の、抜本的な、
ムツゴロウさんは、とことん「根源的」でした。
名著『生きる』
どうしても断捨離できない1冊『生きる』は、そんな畑氏の初期の作品。
なんとほとんど半分以上、アメーバ🦠の話で構成されているのです!
アメーバというのはもちろんあの単細胞生物。
顕微鏡で観察しても、ただどろどろした液体とさまざまな粒だけで、
これといった精巧な構造など見当たらないのに、
小さな体の中に予想もつかないほど精妙な秘密が隠されている‥
われわれの中にもアメーバが
ムツゴロウ氏が丸々2年を捧げた研究と思考の連なり。面白くないわけはない。
私たちの血液にもアメーバと同じ細胞があり、いまもせっせと活動していて、
かれら細胞のアメーバ運動があるから、ヒトは動物でいられる。
じゃあ、そのアメーバを動かすものはいったい何‥
ここから、その後の動物達との深い関わりがはじまっているのも、
凄いとも思うし、そりゃそうか、とも思う。
われわれを動かすもの
だって彼はスタートから、われわれ生物を「突き動かすもの」は何か、
そのことを考え続けてきたわけですから。
犬や猛獣たちがいったい「何に動かされている」のか、分かっちゃうのも納得。
さらにこの本は「動物の性」に深くたどり着き、最後は「青春とは何か」を語ります。
一年のうち何日か、まわりの自然が異常に美しく見えるのを経験した人はいないだろうか。森の緑がしたたるように美しく、空には妖気さえただよい、胸に吸いこむ大気が得もいえずさわやかな。
青春とはそんな日々だ。
畑正憲「生きる」
ラジカルで、快楽主義で、とことんロマンティックなおじさん
子どもの頃、テレビで狂人を見た気がしたけど、まったく馬鹿にはできなかった。
大人になってからも、いや、大人になってからこそ、より尊敬したかもしれません。
こんなにかっこいい人も中々いない。
昨日もYouTubeで「犬の声の聴き分け実践」してるあなたを見てたら、涙が出てきた。
さようなら、ムツゴロウさん。
たくさんの智慧を、ありがとうございました。
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